トワイライツ・ノーツ

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ヌテッラの誘惑


イタリア人アレッサンドロ・ジェレヴィーニ氏の手になる、食べたいほど愛しいイタリアという本を読みました。


これがなかなか面白かったです。イタリアと言えば食事が美味しいイメージがあるのだけれど、やはり食べ物に関しての話が面白い。


著者のジェレヴィーニ氏いわく、彼は『ヌテッラ中毒』らしい。


ヌテッラ*1というのは、

ヘーゼルナッツペーストをベースに砂糖、ココア、脱脂粉乳、香料、乳化剤などの材料を混ぜ合わせた、チョコレート風味の甘いスプレッド。
――wikipedia:ヌテラより


という食べ物で、イタリア人男性の大切なものアンケートで『1位:マンマ 2位:ヌテッラ』となった程愛されているようです(結構ジョークっぽいアンケートのようですが)。


イタリアの実家にいた頃は母の監視もあり思う存分、という程には食べられなかったようですが、日本に来て状況は一変。好きな時に好きなだけ食べられる! という状況故に、却って困った事態になったエピソード等が綴られています。

本当に、もう一生、ヌテッラから抜け出せないかと思った。


という言葉で締められている『ヌテッラ依存症』というエピソードが、ジェレヴィーニ氏の『ヌテッラ中毒』がいかなるものか、表しているでしょう。


ヌテッラに関しては、他にも『ヌテッラ依存症、再び』という話が収録されていて、思い入れの強さが浮かび上がります。
特にジェレヴィーニ氏が作中で引用している『Nutella, Nutellae / Cassini, Riccardo, Comix, 1998』の文章が的確過ぎて面白い。

1)普通の食べ方
母親の監視下朝食の際。一日に必要な最低限の量が摂れるが満足感はない。


2)罪深く、密やかな食べ方
母親が買い物に出かけて不在の際。母親が出かけたとしても財布や車の鍵の忘れ物をし、すぐ帰ってくる可能性があるので、ヌテッラの瓶を攻撃する前に十分程度待った方が無難だが……。


3)ヒッチコック型のスリルに富んだ食べ方
母親が家のほかの部屋で別の用事に気を取られている際。いつ台所に戻ってもおかしくない、極めて危険性の高い食べ方。優れた聴覚に恵まれた人しかできない。しかしフローリングではなく、絨毯を敷いてある家では、母親の足音が聞こえないのでバレる危険が多過ぎる。


これに当てはまる食べ物は……私の場合、『味海苔』と『韓国海苔』ですね。食べ過ぎるので母に隠されたものですが、その都度探し出しては食べていた。


大人になった今は、食べ過ぎてしまうので、滅多に買わないことにしています……。


ところで何だか美味しそうだったので、このヌテッラ、早速買って食べてみた。イメージ的に、ピーナツバターがチョコレート味になったような?
パンに塗って食べてみたけれど、美味しかったです。たまに板チョコをパンに挟んで食べるのですが、ヘーゼルナッツが入る分、それよりも香ばしい感じがした。
新しく食卓の仲間入りをしそうだ。


取り上げた本

食べたいほど愛しいイタリア (新潮文庫)食べたいほど愛しいイタリア (新潮文庫)
アレッサンドロ ジェレヴィーニ Alessandro Giovanni Gerevini

新潮社 2009-06
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*1:ちなみに“Nutella”という名前はイタリアのフェレロ社の登録商標となっている