トワイライツ・ノーツ

読書感想と自転車と雑記

白菊読了

白菊著:夢野久作青空文庫

http://www.aozora.gr.jp/cards/000096/card1120.html


読み終わりました。

作品については、ああ、夢野久作らしい(といってもまだ数作品しか読んでいないのですが)感じなのですが、ひとつ気になった言葉がありました。


『面黒い』という言葉です。『面白い』は普段よく聞くし使うけれど、『面黒い』とは聞いたことがない。


調べてみると、こんな意味らしいです。


1 「おもしろい」をしゃれていった語。

「これは―・い。ぜひやってみましょう」〈独歩・号外〉

2 「おもしろい」の反対の意で、「つまらない」をしゃれていった語。

「富士なくば―・からん東路」〈一息〉

goo辞書より


『面白い』の反対の意味かなと思っていたら、両方使えるらしいです。その辺りは文脈で判断ということでしょう。


ただ、作中『面黒い』が出てくるのは、主人公(刑務所から脱走した犯罪者)が途中で忍び込んだ家で寝ている女の子の近くに、それはそれは重たい白菊の鉢を必死で運んでいる最中のこと。



彼は肩の上に喰い込んでいる菊の鉢を、そのまま、眠っている少女の頭部あたまめがけて投げ付けたい衝動を、ジット我慢しながらモウ一度、寝台の中を白眼にらみ付けた。

……畜生……ブチ殺した方が面黒おもくれえかも知れねえんだが……それじゃ俺の意地が通らねえ。タタキ付けて逃げ出したと思われちゃ詰まらねえかんな……畜生……。

と唇を噛み締めながら考えた。

白菊著:夢野久作青空文庫より


こんなシーンで『しゃれ』ている余裕があるとも思えないのですが、主人公本人も頭のどこかで自分が滑稽なことをしていると思っている――という表現なのかも知れませんね。



ところでもうひとつ気になったのは『おめざ』という言葉。これも久々に聞きましたが、どことなく甘ったるいような、そんな雰囲気のこの言葉は作中に出てくるのにまたぴったりな訳で。


こういう言葉選びができるようになりたいですね。