【書評】ミュシャの世界、クリムトの世界
美術的な素養がないのですが、デザインの勉強の一環ということで、美術書にも目を通し始めました。
今まで美術書の類はほとんど見たことがなくて、最後まで読めるのだろうか……と思ったのですが、自分でも意外なくらい面白かったです。
また、 せっかくなのであえてwikiは見ず、本の内容のみでご紹介しております。wikiは便利なのですが、そういうものを先に読むと変な先入観が出来てしまうかなと思いましたので……。
という訳で、以下書評です。
ミュシャの世界
ミュシャの絵に関しては、シャンパン・ホワイト・スターのみ知っていました。なぜかというと、母が好きで、シャンパン・ホワイト・スターの大きなパズルが家に飾ってあったため。
子ども心に印象が強く、でも英語が読めないので作家の名前すらわからない……という状態で数年が過ぎていました。
そんなある日、「そういえばあの絵の作家は何て言うの?」と尋ねたところ「ミュシャだよ」という返事が返ってきて、以来何となく気には留めていたのです。
内容ですが、ミュシャの出世作『ジスモンダ』は元より、『四季』、『ジョブ』、『メディア』など数多くの作品の他、『スラヴ叙事詩』に関しても解説があります。
『スラヴ叙事詩』に関してですが、ミュシャが愛国心溢れる絵を描いていたとはまったく知りませんでしたし、何より78歳でナチスの尋問を受け、それが元で亡くなっていたことに二重に驚きました。
作品数はたくさんありますが、34歳で女優のサラ・ベルナールの依頼で描いた『ジスモンダ』で人気が出、46歳で結婚……と少し遅咲きな感じも意外。
綺麗な線や配置、繊細な色遣いなど、眺めているだけで楽しかったです。
クリムトの世界
黄金様式の作品の他、油彩、肖像画、素描などが収録されています。
戦火で焼失した作品の写真なども収められていました。
個人的には、『接吻』と『ヘレーネ・クリムトの肖像』(クリムトの姪)が綺麗だなと思いました。
びっしりと書き込まれた不思議な模様と、女性の色気が印象的。
コラムを見ると、多くの女性と関係があったとあり、絵の女性たちの表情はその折に見たものが元になっているのかなあと。一方で生涯結婚はしなかったとのことですが、エミーリエ・フリューゲルという義妹とは生涯親密な付き合いがあり、しかも一線を越えることもなかったようです。
また、非常に寡黙で自身の作品について語ることがなく、
画家としての僕に注目し、何かを知りたいと思う人は、僕の絵を注意深く見て、そこから僕が何であり何を欲しているかを認識するように努力してもらいたい
という言葉を残しているそうです。
私は、華やかなのに沈んだ、物悲しいものを感じます。
一方、クリムト本人はどんな人物かと言うと……
仲間からは「スポーツ選手」のあだ名で呼ばれていたらしい。
社交性があり人望も厚く、親切で、特にシーレやココシュカなどの後進を引き立てて世に出るチャンスを与えたことで知られている。
とあり、見た目は武骨ながら、コミニュケーションの上手な人であったらしいです。芸術家って内にこもるイメージがあったので、ちょっと意外でした。
余談
芸術にはとんと疎かったのですが、細かい様式は知らなくても、絵を眺めるのはとても面白かったです。また、作者の人生などはなかなか興味深くもあります。
また、偶然なのですが両者とも1900年前後の活動であるため、ちょうど同時期だな、ということにも気が付きました。それでいて、両者女性をメインに描いています。
クリムトの方がより生々しい女性を描いているような気がします。が、ミュシャはそもそもポスターとしての作品がメインで、その点では土俵が違うため単純な比較は無理ですね。
それから……やっぱり絵描きの人は絵が上手いんだなという当たり前すぎる感想を持ちました。写真と見まごう程の絵があるのですが、こういう基礎があって初めて崩しているんだなというか。
これからも、時々美術書を読んでみたいと思います。