トワイライツ・ノーツ

読書感想と自転車と雑記

コーディングもデザインも技術としては溶け合っている

コーディングの部署へ異動してから一年と半年。別の制作会社で3か月。初期業訓練校でおよそ4か月……となんだかんだでコーディングを始めて総計で2年程が経ちました。

元々コーディングは好きだけれどデザインは苦手、できればやりたくない、と思っていましたが、しばらく前からデザインもやってみたいと考えるようになりました。

自分の手元に来たときには、既に手が出せない状態

勤務している会社は基本分業制のため、私の手元に来るときにはデザインがFIXした状態になっています。

以前なら、きちんとデザイン通りに仕上げること、修正・追加を考えたコードを組むこと、新しいCSSや組み方を試すのが単純に楽しかったのですが、近頃では自分ならこうするかなあとか、これはもう少しこうした方がいいのではとか、それならデザインの段階から制作してみたいなあということが増えました。

それまではコーディングさえできればいいかなあとどこかで考えていたのですが、サイトをいくつも作ってみて、どうもそういうものではないなと感じるようになりました。

そもそも昨今はレスポンシブデザインやアニメーションを始め、画面のデザインはおろかユーザーの見る環境も固定されていない

画面幅が縮まればテキストの折り返しが発生したり適切な画像サイズに合わせる必要が出てきますし、アニメーションや、そもそものデザインもPCとスマホが同じであっていいはずがありません。

弊社の作業フローだとPCとスマホそれぞれのカンプが用意されていますが、動きの部分までは指定がないことも多いです。またテキストの折り返しが考慮されていなかったりわずかなデザインの違いがコーディング効率を大きく損なうこともあります。

デザイナーさんがコーディングやレスポンシブデザインをある程度理解していれば防げることではありますが、うっかりというのはどうしてもありますし、一枚ペラのカンプでWebサイトをデザインするというのがもう難しい時代なのではないでしょうか。

色々試してみたいCSSがある

たとえばアニメーション関連のものとか、傾きとか、Webフォントとか、最近やっと使い始められるようになったFlexboxとか……そういうものを使ってどこまで表現ができるのかな、と試してみたいものはあるのですが、やはりデザイン段階から関わっていないと難しいです。

また、デザイナーがCSSでできること・できないこと知らなければそれを取り入れたデザインにはならないため、使う機会がないままになってしまう可能性が高いです。

コーディングを知らないデザイナーの方が良いデザインになるとは言われるが、そうとは思わない

なまじコーディングを知っているとつい楽なようにデザインしてしまうし、それが制約になってデザインが縛られてしまう。だからデザイナーはコーディングの知識はなくても良い……というのはときどき見かける意見ですが、それはよほど優秀な人に限るのではないかというのが個人的な所感です。やはり知識はきちんと押さえておいた方が良いと思います。

以前、おそらく今まで紙ベースのデザインはしてきたのだけれど、コーディングはおろかWeb制作そのものに詳しくないデザイナーさんの作ったデザインというのを担当したことがありました。

ほとんど同じに見えるのに、微妙に違う部品(使いまわせない)。CSSとテキストで表現したいのだがそうさせてもらえない(標準的に実装されていないフォントの使用)。マージンや文字詰めなどのこだわり。CMYKとRGBの食い違いや導線整理のされていないデザインなどなど、製作上様々な苦労があったのですが、労力の割にWebサイトとしてはあまり良い出来にはなりませんでした。

別にデザイナーさんを批判したい訳ではありません。見本として渡されたデザインは紙面上で見る限りは小奇麗ではありました。

私もデザインの極端な変更にならない範囲で、可能なこと・不可能なこと・効率の悪いこと・良いことなど切り分けたり提案したりして進めました。

けれど、残念ながらWebサイトとしては良い出来ではない。そういう結果に終わりました。そしてそれは私にとってもデザイナーさんにとっても不本意なことだと思います。

もし、デザイナーさんにhtmlやCSS、Webの知識があったなら

こういう目的があるのでこの動きできますか? とかこれはできますよね、とか、たぶん制作としての難度は上がったと思います。変なコーディングをしたらつっこまれもしたでしょう。

その場合、実装がうまくいかなくて頭を抱える羽目になったのかも知れませんが、たぶん私はできる範囲で応えたいと考えた気がします

理由も目的もわからず難度の高い実装を求められるのはモチベーションが上がりませんが、そうでないなら挑戦してみたいと思うからです。難しければ難しいほど燃えるという性格ではありませんが、目的があってそれを実現するために動くのは楽しいことです。

逆に、デザインがまったくわからないコーダーも良いとは思わない

デザインがまったくわからない頃の私は、たぶん行間とか要素間の広さとか色とか、そういった部分にとても無頓着だったように思います。

もっと言えばデザインは忠実に再現するとしても「なぜこの間隔なのか」「これがここにあるのはどういう意図か」を考えるところまでは至っていなかったのです。

するとなにがいけないかというと、デザイナーの意図がわからないままに作業することになるので、たとえばちょっとしたズレや配置ミスに気づかなかったりするし、デザインも踏まえた提案というのもできません。

……ということをこれまでコーディングし続けて実感しました。同じデザイナーさんのデザインを何度もコーディングするのでもちろん各々の癖については自然と覚えるのですが、デザインをただ再現することの先に至れません。

それは修正が入りそうな箇所を予測して対応できるようにしておいたり、必要そうな素材を考えておいたり、コーディングしやすくかつデザイン的にも妥当と思われる提案をしたり、逆にズレた箇所などをちょうどよく整えたりといった地味なことですけれど、デザインに対しての感度が低い状態ではできなかったことばかりです。

まとめ:Web制作のスキルはどんどん専門化されているけれど、結局地続きにあるのでは

最終的にWeb制作で求められるのは、

  • ユーザーが気持ちよく利用できる
  • ユーザーに役に立つ
  • クライアントの目的を達成できる

というところなのですが、昨今分業化が進んでいるとはいっても個々の分野に引きこもっていると広がりは望めないと思います。

冒頭で述べた通りよほど優秀な人なら話は別ですけれど、普通のレベルに収まるスキルであれば、組む相手の仕事について知っている方がずっとスムーズです。突き詰めていれば触れざるを得ない瞬間が来ますし。逆に、知らないままでなんの問題も起こっていないと感じているのであれば、どこかでその分を負担している人がいるのではないでしょうか。

私は特にスキル的に突出している訳ではないですし、単純に興味が出てきたことも重なってデザインの勉強を少しずつしていますが、やればやるだけ『サイトを作る』という流れの中では不可分で地続きだなあと感じています。