トワイライツ・ノーツ

読書感想と自転車と雑記

読み返す本たち(小説編)

一度読んで終わりという本もあれば、何年経っても、何度も読み返す本というものもあります。


やはり、何度も読み返す本となるとさほど数が多い訳ではありません。

本棚を整理したので、一部ご紹介したいと思います(既に絶版となった本も多いですが…)。


小説

からくりからくさ (新潮文庫)からくりからくさ (新潮文庫)

梨木 香歩


新潮社 2001-12-26

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確か、初めて手に取ったのは、高校生の頃だったでしょうか。図書室の小説棚にひっそりと置かれた本でしたが、気付けば手に取って夢中で読んでいました。当時はハードカバーのものでしたからお小遣いから購入するのは少し厳しく、在学中に幾度と無く借り、卒業してからは文庫版を買い…とずっと手の届く所に置いてある本です。

主人公・容子の祖母が亡くなり、その後空き家となった家で若い女性4人と『りかさん』と呼ばれる人形が共同生活をする、というお話。

日々の濃やかな描写や、織物、染色、『雑草(といっても食べられるものです)を食べる』というつましさに似合わない楽しそうな生活、また、次第に紐解かれていく因縁など、何度読み返しても飽きない魅力のある本です。



檸檬 (新潮文庫)檸檬 (新潮文庫)

梶井 基次郎


新潮社 2003-10

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桜の樹の下には梶井基次郎

http://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/427_19793.html

青空文庫のリンクも張りましたが、この『桜の樹の下には』という短編は、読んだ回数は恐らく百回は下りません(むしろ、ほとんどこのためだけに文庫本を買ったようなものでした)。

読んでいると、満開の夜桜、そして桜の木の根が抱え込んだ『あるもの』が目に浮かぶようです。



月の影 影の海(上) 十二国記 (新潮文庫)月の影 影の海(上) 十二国記 (新潮文庫)

小野 不由美 山田 章博


新潮社 2012-06-27

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最近新装版も発売されている十二国記シリーズですが、これもやはり何度読んでも面白いです。

物語としては、中華ファンタジーといったところですが、緻密に作りこまれた設定や魅力的な登場人物達は、何度触れても飽きません。

初めて読んだのは、高校生くらいの頃だったでしょうか。図書室に全巻揃っていたので幾度と無く借りては読んで、卒業してからは少しずつ集めています。

特に、『月の影 影の海』『図南の翼』が好きです。



箱のなかの海 (コバルト文庫)箱のなかの海 (コバルト文庫)

樹川 さとみ 久下 じゅんこ


集英社 1997-12

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本の形式としては、短編がいくつか収まっており、どこから読んでも楽しめる作りです。

ただ、どれも共通して少しばかり老成した主人公の少年の日常と、叔父から譲り受けたラジオから流れる御伽噺が軸となっています。

作者の樹川さとみさんの書く文章が好きでして(多くは漢字で書かれるところを“ひらいて”あったり、独特のとぼけたテンポや、やわらかさがあります)、やはり何度読んでも面白いです。

残念ながら古い本なので絶版となってしまっていますが…。



十八番街の迷い猫―夕なぎの街 (富士見ファンタジア文庫)十八番街の迷い猫―夕なぎの街 (富士見ファンタジア文庫)

渡辺 まさき 山田 秀樹


富士見書房 2002-03

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このシリーズも絶版となっていますが、何度読み返しても温かいというか、派手さはありませんが雰囲気が好きです。

話としては、恐らく大正辺りの時代をベースにしたファンタジーです。

そこで『夕凪』という居酒屋で働く錬金術師志望の青年、そこに迷い込んだ少女、自動人形(アンドロイドのようなものです)が織り成す日常を描いています。

作者の方が料理人だったそうで、食べ物の描写が美味しそうですし、作品の舞台が魅力的です。



放浪の戦士―デルフィニア戦記〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)放浪の戦士―デルフィニア戦記〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)

茅田 砂胡 沖 麻実也


中央公論社 1993-10

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こちらもファンタジー。異世界(中世ヨーロッパくらいでしょうか)に突然飛ばされた少女(卓抜した剣の腕と能力を持つ)が、反乱により城を追われた王と出会い、成り行き上王を助けるという話の筋です。

ただ、ここまで書くと大変王道なのですが、やや特殊なのがこの少女というのが異世界に飛ばされる以前は少年であり、しかも勇敢な戦士の魂を持っている、ということです。

つまり、王と少女の間に恋愛感情は一切発生することなく、『同盟』と『友情』で繋がっている関係です。

魅力的な登場人物がたくさん登場し、そして何組かはそれなりの仲になっていったり、また王と少女が率先して彼らの仲を取り持ったりするのですが、主人公の王と少女は一切そういった関係にはなりません。

話自体は骨太なファンタジーといった感じで、読んでいて気持ちのいい作品だと思います。



静かな黄昏の国 (角川文庫)静かな黄昏の国 (角川文庫)

篠田 節子


角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-03-24

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短編集です。

どれも面白く、また示唆に富んだものもあるのですが、中でも気に入っているのが『リトル・マーメード』です。人魚にそっくりなウミウシの一種を軸にした作品。

その『人魚』の表現が艶かしく、またじわじわとした恐怖やどこか哀しいような、何とも言えない結末。

また、表題になっている『静かな黄昏の国』は、人間の業の深さというか、色々とありましたから何とも言えずリアルです。




以上、少なくとも数年以上は手元に置き続けて、幾度と無く読みふけっているものを挙げてみました(全部ではないのですが、いずれまた)。

所謂ライトノベルに分類されるものも多いのですが、やはり何年経っても面白い作品、というのはたくさんあるもので。

並べてみて思いましたが、私は所謂『世界を救う』だとか『勧善懲悪』にあまり興味がなく、『日常』がきちんと描かれている作品が好きなのだろうなあと。

或いは、表現の妙がある作品。

もしくは、料理が美味しそうなものや、世界観、小道具が魅力的なもの。


ちなみに、ここに挙げた本の作者の作品は、大体一通り読んで、そちらもお気に入りがあったりするものも多いです。

日々、たくさんの本が発刊されていますが、5年、10年と色褪せない本と出会えのは貴重ですし、幸せな気持ちになりますね。