トワイライツ・ノーツ

読書感想と自転車と雑記

BUNDANカフェと旧前田侯爵邸





パンケーキが無性に食べたくなった*1ので、気になっていたBUNDAN COFFEE & BEER(http://www.bundan.net)に行ってきました。

近代文学館内にオープンしたカフェで、文学に関連したメニューがあるそうです。



駒場東大前駅に到着し、西口から出て……やっと到着の目処が立ったのはおよそ40分後のことでした。西口から出るまでは良かったのですが、西口前が二方向に分かれていたため、HPの地図に書いてある方とは反対方向に向かってしまった*2のです……。






「西口ってひとつしかないはずなんだけどなあ」と散々住宅街を歩き回った後、起点となる駅に戻って、進んだ方とは反対側に抜ける道を発見した時の安堵感といったら……! そして目的の駒場公園に向かう前に少し寄り道をし、東大の門を見てから向かいました。深い意味はないのですが、一度も実物を見たことがありませんでしたし、そう来る場所でも無いですから*3


「ここが東大かあ……」と少しの門を見上げてから、時間があまりないのですぐ引き返し、駒場公園方向へ。一般人も見学できるようでしたが、大幅に時間をロスしていたのでいつかまた……。



文壇カフェに行く前に、駒場公園内にある旧前田侯爵邸を見学しました。

旧前田侯爵邸については、以下パンフレットの引用を一部載せます。



加賀百万石(今の石川県)の当主だった旧前田家の前田利為侯爵駒場邸跡です。

建物は、昭和初期の和洋両建築の粋を集めたもので、化粧レンガやタイル張りのほどこされた洋館は昭和四年、書院づくりの和館は昭和五年に完成し、自然の巨木をいかし、名石をあしらった幽すいな奥庭や、芝生の広場が設けられました。



長くなりますので歴史や建てたきっかけなどについては省きますが、建築物として大変貴重*4ですし、美しいものです。

まずは、和館の方から(外観を撮り忘れました……)。

中は1階のみ見学可能となっており、入ってすぐ続きの和室がありました。










建築様式などのことはわからないのですが、縁側に座って抹茶と茶菓子でのんびりしたいなあ……と(見学時は、飲食禁止なのでできませんが)。

見ている内に、ふと祖父母の家を思い出しました。もちろんこんなに立派なものではないのですが、落ち着いた空間が懐かしいというか、和室って人の緊張をほぐすような趣がありますよね。

庭の眺めはこんな感じです。






縁側に座って庭を眺めるのもいいのですが、ちょうど緑豊かな時期のため、茶色が基調の和室の中から眺めると、はっとする程色の対比が綺麗でした。



次に、旧前田侯爵邸・洋館。





こちらはチューダー様式*5のデザインだそうです。一階ホール右手部分には喫茶室があって、庭を見ながらコーヒーや紅茶などを飲むことができます*6

まず玄関ホール。

瀟洒という表現がぴったりです。階段下には腰掛けられるスペースがあり、客人がちょっと待つスペースだったのかな……と。








以下、写真をいくつか(場所のプレートを撮影し忘れたため、どこの部分かは省きます)。















見学していると女中室などの使用人室もあって、そういう目で見ると『客人を招くこと』『使用人がいること』が前提の造りになっていると気がつきました。まさに『貴族階級の家』というか(当たり前なのですが)、階級の違う人が住まう間取りということを実感できました*7

家具の置いてある部屋もいくつかありましたが、そういった物のない部屋の方が多かったです。家具が置いてある方が当時の様子やイメージが掴みやすいですし、家具のデザインを眺めるという楽しみも増えるので、それは少し残念です(保管や、盗難や破損等の危険を考えればやむを得ないかとは思いますが……)。

当時の家具って今はどうなっているのでしょうか?どこかに保存してあるのだったら、いずれ見られる機会もあるのかも知れないですね。

見学可能な部分は隅々まで歩き回ってみたのですが、しっかりとした贅沢な造りで目に楽しい。




曲げ木の手すりや透かし彫りが美しい。



こちらはホールから2階への階段。







……等々、細部の透かし彫りや彫り込みが多数。



壁紙。



寄木の床。



細部の彫り物や壁紙、床までも凝っていて、注ぎ込まれた技術の高さが窺われます。ここでふと思ったのですが現代では同じものが建てられるのでしょうか?

大工の方々の高齢化、或いはその他の伝統技術の継承問題など色々あるようですから、幾つかはもう再現できない技法もあるのではないかなと思うのですが。

いずれにせよ、貴重で綺麗な建物だなあ……と時間を忘れて見入っていました。



ちなみに女中部屋。


就寝時は、千と千尋の神隠しで従業員達が寝ていたシーンのような感じだったのではと思います。洋室に比べて寝台スペースは取りませんし、片付ければすっきりしますし、和室って合理的ですよね。



日によっては無料でガイドもあるようで、折角なのだからそういう日を選んでも良かったかな……と思いました。






さて、旧前田侯爵邸の見学が終わったところで、いよいよ文壇カフェへ。

店内は冒頭写真を再掲。


思っていたよりは狭いですけど、良い意味で雑然としていて(本のラインナップ含め)、『読書好きの友人の家に来た』という印象でした。入り口脇には小物が展示してあり、購入することができます。

店内は客の入りはそれなりにありましたが、五月蝿くはなく落ち着いていました。



そして、目的だった池波正太郎のパンケーキ!




小さめに見えますが結構分厚くて、添えてあるクリームは甘さ控えめ。表面はさくっとしていて、口に入れるとバターの香りがしました。

ジャムはアプリコット(季節によって変わるそう)で、こちらも甘さはそこまでではありません。シンプルで甘さ控えめなものが好きなので、好みに合っていて美味しいと思いました。

他にも、宇野千代のそぼろカレーに惹かれるものがありましたが、両方は入りそうもなかったので断念*8。 その後は、ちょうど読みたかったドロヘドロ*9を本棚に発見したので、そちらを読みふけってから帰りました。

道に迷うというハプニングはありましたが、楽しかった。

また、機会があれば訪れてみたいです。


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林田 球


小学館 2002-01

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*1:筆者は粉もの(特にパンやホットケーキなど具材が入らないシンプルなもの)が好物。後はバターがあれば概ね満足。

*2:最初そちらの道に気付かなかった

*3:出不精の筆者の生活圏から離れているため。

*4:平成25年5月17日に国の重要文化財として指定する旨を文化審議会から受けたとのこと。正式な指定の告示はまだだそう。

*5:玄関の扁平尖頭アーチなど。ちなみに、ハーフティンバー様式もチューダー様式に含まれるそうだが、この洋館は異なる。

*6:値段も200円のものからあり、大変お手頃。筆者としては歴史的に貴重かつ美しい建物内で落ち着いてお茶ができることもあり、近所であれば足繁く利用したのに……と羨ましいような哀しいような気分に陥ったことも付記。

*7:一般庶民の筆者は、高い天井に設置されたシャンデリアを見ると『掃除や手入れが大変そう』、広い室内を見れば『掃除が大変に違いない』など、どこまでいっても自身は生粋の庶民であるという自覚を深める結果となった。更には使用人部屋が最も落ち着くスペースであり、リアルに『住みたい』というイメージを膨らませることができたのもその区画であった。

*8:そもそもの話、パンケーキ→カレーと進むとデザートと食事の順番が逆となってしまうため、それも躊躇った理由のひとつ。

*9:ダークファンタジー。ややグロ描写が多いので食事時に読むのはあまりおすすめできない作品。筆者はそういうことはさほど気にならないのでチョイス。