還暦を過ぎた母が、あるひとことでスマホの使用に前向きになった話
私の母はガラケーを使っています。家にインターネット回線はなく、調べ物は基本的に図書館などです。
それで必要十分だし、スマホにして毎月7000円も払うのはもったいない、というのが主な理由です。
しかしそれでは少し不便だろう、ということでスマホの代わりとして古いiPod touchを譲ったのを機に、GoogleアカウントとAppleIDの設定をしました。
ところが母はExcelやWordは使えるものの、GoogleアカウントやAppleIDなどを感覚的に理解できない*1。
また、タッチパネルなどのUIに馴染みづらいらしく、なかなか触ろうともしません。
ボタンも押しづらいと言いますし、指先がカサついていると反応が鈍くなるようです。
とりあえず!
細かいことはいいから好きなメールアドレスとパスワードだけ決めて!
と何とか設定は済ませたのですが、で、それが結局なんなのか、なんのためなのか……というのはわかってもらえずじまいでした。
あれこれ登録するのに使えるよ、と言っても「でもどうせ使わないし……」と尻込み気味。
使っていけばその内ピンとくるだろうとは思うのですが、そもそも『使う』というスタートラインに立ってもらえない感じです。
色々言葉を重ねた結果、下記の一言がきっかけでなんだかこちらが拍子抜けするほど使用に前向きになりました。
私「友達とかからさ、写真送られて来ることあるでしょ?」
母「あるけど?」
私「Gmailに写メつきメールを送ってもらえば、パケ代がかからないよ。写真をパソコンとかiPod touchに保存したりできるよ」
母「! それって『写真はパソコンメールに送ってね』って言えるってこと?」
私「そうだよ」
母「便利だねえそれ」
私にしてみれば、家にインターネット回線はあって当たり前だし、PCメールに写真を添付するのに料金を気にするという意識がすっぽり抜けていたのですが。
基本ガラケーの母にしてみれば、人から送られてくる画像付きの『重たいメール』は悩みの種だったようです。
ガラケーでは綺麗な画質も望めないですし。
そういう訳で、単純なひとことが『重たいメール』『低画質』という悩みが解決するという大きな動機付けになりました。
この調子で徐々にスマホ代わりのiPod touchに馴染んでいってもらえれば、いずれ感覚的に理解はできるようになると思うのですが……その頃になったら今使っているiPod touch6を譲ろうかなあと考えています。
壊しても気にしない精神で好きに触ってもらった方がたぶんいい気がします。
まとめ
たった一言であれだけ嫌がっていたのが? と結構驚いたのですが、そういえば下の本を読んでなんとなく母が抱えている問題(パケ代が高くなるのは嫌だけど友人から送られた写真は見たい)に目を向けてみようと思ったのでした。
- 作者: デール・カーネギー,さいとうかずと,田中孝顕
- 出版社/メーカー: きこ書房
- 発売日: 2018/01/22
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人に物を売りつけられたとか、人の言いなりになったとか思うのは、誰でも嫌なものです。誰もが、自分の都合で、そして自分の意志で、物を買っているんだと思いたいのです。
引用:こうすれば必ず人は動く 「相手の心をうまくつかんで人を動かす」より
あと単純に、『見知らぬものになかなか馴染めない人』をよく見てみるのはデザインの勉強の一環として、興味深いものでした。
大きくまとめるとその原因は、
- 概念がわからない
- 必要性を感じない
- UIとしてわかりにくい・使いにくい部分がある
が主なところのようでした。
つまり今回の例でいえば、下記のような傾向がみられました。
- 複数端末を使い分ける機会がないため、共通で使えるアカウントという概念がわからない
- メールのやりとりをわざわざPCメールで行う必要性を感じない
- タッチパネルは身体的に使いづらいし、iPod touchや各種アカウントの設定もよくわからない
特にタッチパネルの使いづらさというのは私自身が意識していなかったので盲点でした。
動機がなければなおさら遠ざけるのは当たり前です。
最近はかなり色々なものがタッチパネル化していますが、どうも状況によってはベスト解ではなさそうだなあ、と思います。
こうして考えると、身近なあちこちに何らかの実践の種は転がっているようです。
*1:違う端末を使っても設定や情報が引き継げるってどういうこと? という感じ。そもそも複数の端末を使用するというのがどうも想像しづらいのが原因のよう