トワイライツ・ノーツ

本とWEBと、気ままなこと

【書評】GW中に読んだ本71冊

こんにちは、柊クイチです。
10連休中に読んだ冊数を数えたら、ほぼ漫画とライトノベルばかりではありますが、なんだかんだで71冊でした。
シリーズものを読み通していたりで、気づけば結構な冊数になったようです。

数日里帰りした以外は本を読むか、寝るか、展示会に行くか、ゲームするかというとても充実した休日でした。

という訳で感想です。

違国日記1~4巻 ★★★★★

少女小説家の高代槙生(こうだいまきお)が、姉の遺児の少女、朝(あさ)を引き取り、共同生活を送る漫画。

しかし親戚で盥回しになりそうな朝を放っておけずに勢いでそうなりましたが、槙生は人見知りな上ひとりの時間が必要なタイプの人間で、なかなか折り合いをつけることが難しく……時として衝突したり、互いの痛い部分に触れてしまったりと順風満帆とはいきません。

また、朝は朝で基本的には聞き分けが良いものの、親を亡くしたばかりの思春期の少女らしく、友達との衝突や少しだけ特別になりたい気持ち、槙生にこちらを見てもらいたがったり、寂しがったりと難しい時期です。

私は槙生と似たところがあるタイプの人間で、彼女に共感を覚えます。また、彼女は彼女で朝の母親である姉に対して思うところがあり、そちらも難しい問題を抱えています。

こんな当たり前のこともできないの?
違国日記1巻より

という言葉は、自分が不得手なことに打ちのめされてきている人間には、本当に突き刺さる言葉なんですよね……。

また、槙生は姉からこうも言われています。

「槙生 あんた」
「恥ずかしくないの妄想の世界にひたってて」
「小説だか何だか知らないけど もう少し現実に向き合えば?」
違国日記2巻より

「槙生」
「あんたがダメだから言ってやってんの 姉として」
違国日記1巻より

一方の槙生はというと、

あなたの感じ方はあなただけのもので
誰にも責める権利はない
違国日記1巻より

とはっきりと朝に述べている一方、姉のことは嫌いだと述べ、

わたしは大体不機嫌だしあなたを愛せるかどうかはわからない
でも
私は決してあなたを踏みにじらない
違国日記1巻より

とも言っています。

傷つけられた少女時代があって今の槙生があり、しかし傷つけた姉への憎しみもあって飲み込めないものが朝に対してもある。
そういう矛盾したものを持っています。

槙生も朝も少なからず朝の母親の影響を受けていて、今度どうやって消化していくのでしょうか。

弱虫ペダル1~40巻 ★★★☆☆

弱虫ペダル 1 (少年チャンピオン・コミックス)

弱虫ペダル 1 (少年チャンピオン・コミックス)

Kindle Unlimitedで1~40巻まで読むことができたので、最初の数日はひたすらこちらを。
高校生の自転車ロードレース漫画です。

始まりは、小野田坂道という主人公の少年(オタク)がクライマー*1としての才能を見出され……という王道系少年漫画。
ママチャリで斜度20度の激坂を立ち漕ぎもなしで鼻歌混じりで登り、しかも秋葉原(往復90km)に毎週通うというのは素人の私が聞いてもすごいと思います。

ロードレースについての知識がなくても読めますし、展開はとにかく熱くて、巻末のおまけ漫画(作者の方が自転車についてあれこれ解説してくれています)も面白かったです。

ただ、いかんせん2年目の展開がちょっと繰り返しに感じてしまうのが難点。

高校生のスポーツ漫画って難しいですよね。主人公を1年生の頃から大会に出場させるとしてもMAX3回までですし、先輩は卒業し、後輩が入ってメンバーは入れ替わり……。
といって高校生という縛りがある以上、時を進めないということもなかなかしづらいものですし。

魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?1~8巻 ★★★☆☆

いわゆる俺TUEEE系ライトノベルです。
正直、こういうタイトルが説明的な小説はちょっと敬遠していたのですが、読んでみれば楽しめるものでした。

いわゆるラブコメではあるのですが、魔術の設定も練られてはいますし、なによりとにかく読んでいてストレスがないので、気晴らしにはぴったりです。

お約束として主人公は高スペック。
かつモテはしますが、ハーレム状態ではなく一途に想い合う相手がいますし、そこに割り込んで来るキャラクターもいません。
理不尽があればそれなりの報いを受けさせている。

要するに、やきもきして「あぁこの先大丈夫なのかな」「こんなキャラクター許せない」という系統のストレスが徹底的に排除されていると言えます。
一方で展開がマンネリという訳でもなく、読み物としてうまくできています。

がっつりと腰を据えて読みたい派にはちょっと物足りないのかも知れませんが、軽く手に取って読むにはおすすめです。

セントールの悩み1~9巻 ★★★★☆

六本肢で進化を遂げた人類の漫画。
ケンタウロス、天使、悪魔、人魚……などさまざまな形態の人々が暮らしています。
メインは日本の女子高生たちなのですが、SFと言ってもいいのかも知れません。

女子高生の何でもない日常の生活の話かと思いきや、形態差別、公安、思想矯正所、テロ、宇宙人など不穏な単語がちらほら混じり、きな臭い感じに。

人馬や人魚が実際に居たとしたらどんな生活をしているのか(トイレ等)、細やかな描写もさることながらSFっぽい設定がスパイスになって面白い作品でした。

少し似た系統の作品で言えば竜の学校は山の上も天使の少女やケンタウロスの主婦が登場するショートストーリーが掲載されていますが、セントールの悩みの方は更にSF寄りというか。
竜の学校は山の上もケンタウロスの労働問題など取り上げていますし、結局どんな世界であっても問題はあるといいますか。合わせてこちらもぜひ。

科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日誌1~4巻 ★★★★☆

初めに断っておきますが、アダルト描写がなければ★5をつけたい漫画でした。

たとえばケンタウロスやアラクネ、ハルピュイアの身体構造はどうなっているのか、彼女らの暮らし方や思想はどうなるのか、という内容が好きな方ならおすすめしたいところではあります。

ただ、主人公の栗結(くりむすび)は(あえてこういう言い方をしますが)クリーチャー娘でハーレムを作りたい、というのが大きな動機ではありますし、最初に断った通りアダルト描写があるので人にはすすめ辛いのです……でも設定が細かくて読んでいて面白い。

作中でアラク*2は『結合双生児の3つ子版が極めて特殊な結合方法で安定している生物』と分析するなど、その発想はなかったという考察が次々と出てきます。
家庭の男女負担の話の考察も興味深いです。

その他、主人公とは別に、有能ながら外見が下の下で女性からは嫌われ、ついに耐え切れなくなって国を出奔し山に姿を消した織津江(おりつえ)というもう一人の主人公の行く末も気になります。

自分がどれだけ努力してもスタートラインにさえ立てない、内心自分を嫌っている相手が、それでも笑顔で接していることを知りつつそれを受け流すフリで限界を迎えてしまいそうなった訳ですが、ふたりの主人公が出会ったときどういったことが起こるのか、楽しみです。

ゴブリンスレイヤー1~3巻 ★★★★☆

元々の更に元々の構想は2ちゃんねるのやる夫スレで連載されていた作品。
そちらはAA*3とテキストで更新されており、リアルタイムでは読んでいなかったのですが小説として書き直されて小説賞に投稿、本としても出版され、更にアニメ化もされている作品です。

普通のファンタジー作品と一線を画すのは……主人公が世界を(直接は)救わず、ただひたすらいわゆる雑魚のゴブリンを狩り続けているというところ。
職人といった感じです。

とはいえ、彼に何の変化もないという訳ではなく、徐々に仲間や理解者が増えたりしていきます。

作中のゴブリンですが、単体では弱いもののとにかく数を頼みに襲い掛かってくるところが非常に厄介です。また、学習能力も高く、それに加えて数が多いと熟練の冒険者も手を焼く難敵になります。
子供数十人に襲い掛かられては、いかに大人でも1人では太刀打ちできないということですね。

しかしゴブリンの討伐料金は安く、基本は経験不足の新人が請ける依頼というのがこの世界の一般認識です。

それをあの手この手で殲滅し続けるゴブリンスレイヤーを描くお話。

作者の方がTRPG*4を好んでいるのか、そちらの知識があるとより楽しいかも知れません。

そのため、登場人物が役職名のみで固有名詞で呼ばれるシーンがなかったり、サイコロの目についてメタ的な視点で語る短い話も織り交ぜられています。登場人物たちの大部分も、出目を意識しているフシがあります。

そういった中でひたすら『サイコロを振らせない(不確定要素を減らす)』ことに徹しているゴブリンスレイヤーは異端と言ってもいい存在です。
確かにTRPGの卓ではここ一番で手痛い目が出てしまい、壊滅……ということもよくある話で、『サイコロを振らせない』のは非常に合理的ではあります。

小説を読んでいるような、TRPGのリプレイを読んでいるような、不思議な印象を受ける作品でした。

教科書が読めればAIに勝てるか?: 人工知能を巡る議論の危うさ ★★★☆☆

『××年後にはこの仕事はAIに取って代わられる』という言説は最近よく見かけますが、それに対して本当に? と原典に当たってまとめている本です。

上記の元ネタは、オックスフォード大学准教授と研究員の共著の『THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?』という論文が元だそうです。

それを参考に書かれたAI vs. 教科書が読めない子どもたちという本があり、教科書が読めればAIに勝てるか?: 人工知能を巡る議論の危うさはそちらを読んでいることが前提の本となります。

で、結論から言ってしまうと元々の論文には次のような記述があるそうです。

それゆえ、我々はあくまで技術的能力という観点から、向こう何年かの間にコンピュータによって潜在的に代替され得る雇用の割合を推定することにフォーカスした。実際にどのくらいの仕事が自動化されてしまうのかを推定する意図は一切ない
教科書が読めればAIに勝てるか?: 人工知能を巡る議論の危うさより

つまり、そもそものスタート地点として……論文を書いた側に、どのくらいの仕事が自動化されるのか推定する意図は一切なかったというのが真相のようです。
それはそれとして、意図がなかったとして有用な統計かも知れない……と思うかも知れませんが、その前提条件は非常に厳しいもののようです。

はたして、ビッグデータは都合良く存在することが所与の条件とできるほどありふれたものでしょうか。最新鋭の機械を思う存分に使えるほど潤沢に予算があることが普通でしょうか。
教科書が読めればAIに勝てるか?: 人工知能を巡る議論の危うさより

今回、オックスフォード大学の機械学習の研究者たちが念頭に置いた機械学習の技術にはディープラーニングも当然含まれています。そして、それが有効に機能するためには質の高い大量のデータ、いわゆるビッグデータが必要となるのですが、そのデータを集めることが実はものすごく難しい。なにしろ、GoogleAmazonをはじめとする世界のIT企業も、ビッグデータを集めるための覇権争いにしのぎを削ってるぐらいです。最近は企業がAIを導入するとプレリリースを打つことも多いのですが、いざプロジェクトを始めてみると、大手企業であっても保存データがそのままディープラーニングで役立つデータであるケースは少ないんだそうです。そもそもデータの蓄積がなかったり、あったとしてもAIでやりたいと思っていることからすれば価値のないものだったりすることが多くて、データを集めるために巨額のコストがかかったり、そもそもおカネを詰んだからといって集められるデータでなかったりして、プロジェクトが頓挫してしまうこともあります。
教科書が読めればAIに勝てるか?: 人工知能を巡る議論の危うさより

ありていにいえば、この問いかけは、「何の苦労もせずとも実用性は折紙付きのビッグデータが揃っていて、青天井でガンガン機器を導入できたら、その仕事は自動化できるでしょうか?」といっているのです。
教科書が読めればAIに勝てるか?: 人工知能を巡る議論の危うさより

……というそもそもの前提のハードルが高すぎて、一般の中小企業ではまず難しいのでは、と思いました。
特に日頃仕事をしている身の体感としては、『AIが使えるデータの蓄積』があまりにも労力もお金も時間もかかる。

なにを分析したいのか。
そのためにどんなデータを、どのような手法で蓄積しなければならないのか。

ここを決めるところからがまず難しいですし、決定権を持つ人がふわっとAIはすごい程度の理解をしている状態では、まず導入を失敗しそうです。

その他、この本では読解力という部分にも触れています。
従来それは人間がAIより優れている、とされてきましたが、適切なデータを与えることにより、これも人間の『読解力』に徐々に追いつきつつあるそうです。

しかしながら、現在において、『読解力が高い=仕事ができる』という訳ではありません。
となると人間並みに読解力が身についたAIが誕生したとしても、仕事がAIに奪われるとも限りません。

いまのAIが語られるとき、既存のプロセスそのものは変えず、人間が行っていることをただ単にAIに置き換える発想で語られることのなんと多いことでしょう
教科書が読めればAIに勝てるか?: 人工知能を巡る議論の危うさより

と著者は述べており、先の論文と併せると『AIによって仕事が奪われるという議論の前提から疑う必要がある』『データは切り取り方で如何様にでも見せられる』なあと思わされる内容でした。

ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~1巻 ★★★★★

主人公のハカバ青年が、腰を痛めた教授の代わりに魔界の住人達の言葉や文化を研究する漫画。

基本的なワーウルフ語と教授の覚書を携えて、体当たりでやりとりを重ねているのがとても面白いです。

発音できる音が違うから、共通言語も難しい、時には身振り手振り、理解できない文化に戸惑いつつも、魔界の住人達に密着していきます。

作中、死んだ竜(故人)の肉を食べる住人達に対して戸惑うハカバが教授のメモを手繰り、下の言葉を見つけます。

「私が理解だと思っていたこと」
「理解ではなく解釈だった」
「理解への壁は限りなく高い」
「今後はその自覚をもって臨む」
ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~1巻より

解釈を積み上げて彼が『理解』までたどり着けるのか、そうでないのかはまだまだわかりませんが、続きが楽しみな作品でした。

僕たちはもう帰りたい ★★★★☆

僕たちはもう帰りたい(ライツ社)

僕たちはもう帰りたい(ライツ社)

仕事って、職場って、理不尽なことも多いし『もう帰りたい』と思っている人、たくさんいると思います。
そういった短いエピソードをオムニバス形式でまとめた漫画です。

近年は働き方改革で効率化、効率化と言われていますが世の中そううまくいく話ばかりではないし、そもそも効率化する気のない人もいます。
利益を出せ、納期を守れ、でも残業はするなと口で言うのは簡単ですけれど、というよくある話と言えばよくある話で。

共感もありますが、必要以上に重すぎず、軽すぎずでさらっと読め、救いもある。そんな読後感の話でした。

ちなみに私は……作中の金森さんの『怒りのポイント制』というところでわかる、とうなずきました。

「お前の怒りはポイント制だ」
「ポイント制? なんだそれ?」
「誰よりも懸命に働き より良い提案をして 理不尽なことを言われても顔色一つ変えずに対応し そうこうしながら気づかぬうちに怒りのポイントが溜まっていき…そしてある日突然 辞める」
僕たちはもう帰りたい より

『ポイント制』で溜めたものって基本的に下がらないんです。
一定以上溜まると『あとは交換を待つだけ』となります。

元同僚から上記の指摘を受けた金森さん、スナック『もう帰りたい』のママさんからはこう予言されます。

きっかけは外から来る
でも つくるのはあんただよ
僕たちはもう帰りたい より

さすがに金森さんのように突然辞めるということはないですけれど……別にマイナスなことだけでもなく、きっかけを自分で作るって大事なことだと思います。

まとめ:ストレス解消はやっぱり本

漫画が大半を占めるとはいっても、短期間にこれだけ読んだのは久しぶりでした。

私の場合、本を読む時間が削られると顕著にストレスが溜まり始めます。
割と嫌なことを何度も思い返してしまうタイプで、それこそ没頭して何冊も物語を読むふけってやっと頭から追い出せるのですよね。
そこへいくとストーリーのある本はうってつけのストレス解消方法という訳で。

読んでいる最中は、人に話しかけられるのも非常に煩わしく感じてしまいます。
久しぶりに朝から晩まで一人っきり、家に籠り切りで読書し続ける時間(それも何日も)を得られました。

元号が昭和から令和に変わっても、人間はどうも変わらないようです。

今週のお題「特大ゴールデンウィークSP」

*1:坂道を上るのが得意な脚質

*2:上半身は女性、下半身は蜘蛛のモンスター

*3:アスキーアート。文字や記号を組み合わせ、テキストベースでイラストなどを表現する手法

*4:テーブルトークRPG。ゲーム機を使わず、サイコロと紙、ルールブックやシナリオを用いてゲームを進めていく。登場人物の行動をプレイヤーが決定し、行動結果の成否をサイコロの目で決めていくのが基本の流れ。