【書評】モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
かくれんぼ戦略の鳥居とりさんの捨てたい病エッセイの続刊が出たので、早速購入しました。
前回の書評はこちらです。
【書評】モノを捨てよ、散歩に出よう - たそがれノート
前回のエッセイは実家での暮らしていた頃ですが、今回は実家を出てふたり暮らしを始めてからのことが中心。
という訳で、以下書評です。
実家を出た、そのきっかけ
12月にゴキブリが出たことをきっかけに、著者は実家を出ることを決めたそうです。私も12月にゴキブリが出たら……嫌だな。泣きたくなるかも知れないです。
そこからゴールデンウィークに部屋を探し、以前よりお付き合いをしていた方との同棲をスタート。きっかけというのはそういうものなのかなあと感じました。
散らかった実家で、母が片づけようとしない数々のモノを見ないようにして、なんとか暮らしてきたのだけれども、その瞬間に何かが吹っ切れてしまった。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
とありますけれど、前々から溜まり溜まったものがある一件で決壊・爆発というのはよくあることで……。
2DKを危ういと感じて、1LDKに引っ越しを決める
最初は夫婦向けの2DK物件を探していたものの、経済的な事情、そして現状を加味して危ういなと感じた著者は、不動産会社の営業さんの話もあり、14畳の1LDKに決めます。
そういう暮らしは、双方の合意があれば確かにありかも知れない……と私も目から鱗が落ちた気分でした。
もちろん、ワンルームはワンルームなりに気を遣うべきところはたくさんあるでしょうが、広い部屋を危ういと感じてコンパクトな方向に舵を切る、というのは著者らしい、と思いました。
そこからの荷物まとめから運搬の流れは、さすがに捨てたい病の著者だけあってスムーズ&スピーディー。
持ち物を減らせば、引っ越しなんて本当に簡単だ。もし私がデスクトップのPCを持っていなくて、デスクを必要としない生活であれば、もっと簡単だっただろう。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
持ち物が少ない強みだよなあ……とうんうんとうなずくことしきりでした。
ちなみに著者は引っ越し荷物の搬入は車で一回で済んだ、とのことでしたが私が引っ越した時は車で1往復必要でした。まだまだ精進が足りない……とはいえ、独り暮らしのところから一切合財運び出して乗用車で済んだ、というのはまだ良かった方かも知れないです(本棚・冷蔵庫・ベッドは捨てましたが)。
シンプルライフを目指すようになっていなかったら、最低もう1往復はプラスでしょうか。恐ろしい……。
ふたり暮らしの結果は、快適
他人同士で、さえぎる壁のないワンルームで暮らすのだから、なにかと不都合なこともあるだろうかと思ったが、今のところ大丈夫である。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
とのことで、現状は特に問題がないようです。
プラス、元々2人が暮らしていた部屋を足したよりも広い空間な上、ワンルームで見通しも良いとあって掃除にも熱心になったそう。
食生活について
ブログやTwitterを拝見している限り、著者はとても細い方で、元々は食事に対してもそれほど熱心ではなかったようです。それが2人暮らしを始めて、食べることが好きな相手の影響もあったりで段々と『食事を楽しむようになった』とのことでした。
良い変化だなあと思うとともに、『相手にの良いところに感化される』というのも2人暮らしの利点のようです。
どうしても減る、趣味の時間
実家を出るとどうしても増える、『家事の時間』。そうするとどうしても『趣味の時間』というのは減ってしまいますが、著者は、
むしろ限られた暇をどうやって自分のやりたいことに使うか、そっちの方が重要だからである。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
私はもともとがオタクだったため、毎日しっかり趣味の時間がとれないと、なんとなく元気になれない人間だったのである。
ただ、最近は「趣味の他にも、心の栄養や潤いのようなものはとれるんだな」という考えに変わってきた。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
とのことで、そのひとつとして散歩をして頭を空っぽにする、などを挙げているなど、気にはなっていない様子です。
私の場合は毎日の趣味の時間が持てないとかなり辛いですが、この「心の栄養や潤いのようなもの」は確かに趣味以外でもとれるよなあ……というところには非常に同感です。
というよりは、たっぷり趣味だけやっていても疲れてしまうので、『空白の時間』も必要というのをだんだんと自覚してきました。
母との関係
実家を出てみて感じたのは、「なんでもっと早く出なかったのだろう」ということだった。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
ホームシックもまったくなく、とにかく快適とのことです。我が家も決して問題ゼロの親子関係とは言えないため、うなずきながら読んでいました。特に実家を出て数か月後の食事会のくだり。
しかし、ほんの少し前まで一緒に暮らしていたというのに、母はすっかり私が食べられるものと食べられないものの区別を忘れてしまっていた。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
あれほど私に対していろいろなことを言っていたのに、なーんだ、その程度のことだったのか、と思って拍子抜けした。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
実家を出て私も似たような経験があって、『その程度のもの』……ということに、実家を出るまで案外気づかなかったりするのです。
何でだろう、と考えてみると、言われ続けているとまさしく『呪い』のように染み込んでしまうんだろうと個人的には感じています。
自分のファッションを制服化
見出しをさーっと眺めた時に、かなり興味を惹かれたこの部分。どういう組み立て方をしているのかなと興味深く読みました。
ある程度パターンを決めて、なるべく組み合わせしやすいものを厳選していくスタイル、のようです。
とはいえ、実は服のパターンについての話より何より、うなずいたのはこの部分。著者がスカートを履くようになるくだり。
ジーパンとちがって、タイツの方が脚にフィットするから動きやすいし、雨の日に裾が濡れることもない。タイツの足首が雨で濡れても、すぐに乾く。
引用:モノを捨てよ、散歩に出よう ふたり暮らし編
同じ考え方の人がいた、というのが地味に嬉しかったです。ズボンに比べてどうしても寒い、というのはあるのですが仕舞う場所も取らないし、何より雨の日や洗濯が楽なため、私はスカートに少し厚手の黒タイツを通年愛用しています。
捨てたい病の買い物の楽しみ方
著者の場合、やっぱり『物欲』という点ではあまり買い物は心に響かない様子ですし、時には苦痛に感じることもあったそうですが、今は買い物というよりデザインやトレンドのチェックという観点で眺め、面白がるようになったそうです。
また、仕事としてモノを売る、ということと捨てたい病の矛盾にも触れられていて、そういうことに悩んでいる人は読んでみると良いのでは、と感じました。
捨てたい病の人にも、ルームシェアを考える人にも、実家を出たい人にも
前作、モノを捨てよ、散歩に出よう と同様(そして最初の文にも書かれているのですが)、捨てる技術を解説する本ではないです。
さらさらっと流れるように、『自分はこんな感じですよ』というスタンスの本なので、とても読みやすいし共感できるところもたくさんありました。
おまけの京都市のお散歩スポットも面白そうです。
前作を読んでいますと、「あ、変化してる」と気づくところもちょくちょくあって、モノを持たないと身軽だし、持たないからといって潤いがない訳でも、それで硬直化する訳でもないんだなあということも感じます。
おすすめです。
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