【書評】究極の判断力を身につけるインバスケット思考
まだ研修期間中なのですが、私の就いた職種は『Webディレクター』というものです。
どんな仕事なのか、というのは下記のような感じ。
Webサイトを制作する際に、webデザイナー、Webプログラマー、コーディング担当など制作スタッフをまとめ、プロジェクト全体の進行管理・品質管理をする仕事です。
実際に傍で先輩や上司を見ていると、確かにこんな感じです。
まだ少しですが、デザイナーさんに依頼したり、クライアントに返信したりということもやらせてもらい始めていますので、表題のような能力が必要かなあと感じて手に取りました。
つまり、たくさん来る案件をどう判断して、どう処理していくかの交通整理係というか。
という訳で、以下書評です。
※ネタバレあります。
最初にたくさんのメールやメモなどを読むことから
本の最初の方は、『青山みあ』という若干24歳の女性が老舗菓子店の店長に大抜擢される……という経緯について、ストーリー仕立てで書いてあります。
その後は、翌日に本社命令で海外研修に行くため時間に余裕がない中、着任する店舗に行って大量の案件に目を通し、帰国するまで問題がないように処理していく……という流れです。
とりあえず最初に、たくさんのメールや書置きがずらっとページを割かれて並べられていて、これに目を通すだけでかなり戸惑いました。
内容は、ミスの報告、職場の規律管理について、部署間の対立、叱責、顧客からのクレーム、従業員からの提案などなど雑多です。
特に副店長の金田という男性は娘のような年齢の女性店長の着任が面白くないらしく、海外研修を『安心して旅行に行ってきてください』と嫌味なメールを送ってきたり、徹夜に連続出勤する従業員のいる繁忙期の12/21~12/25に『有給をいただきます』と言ったり、衛生管理がずさんだったり、部署間の対立も『お互い話し合ってください』と丸投げしたり……正直な印象が「この人、副店長なのに使えない……」でした。
問題は山積みの上、手助けをしてくれるはずの売り場指導員の甲斐さんは不運にも来られず、しかもみあの海外研修とほぼ同じ期間特別休暇、だということで頼れない……。
結構ハードな状況設定です。
自分の弱いところ
実際にやってみて、自分が苦手とすることがいくつか見えてきたのは収穫だったかなあと思います。以下、簡単に書き留めてみると……
大量の案件に目を通したところでフリーズする
まず、大量の案件に目を通したところで困ったのが、『どれから手を付けよう』でした。優先順位順に手を付けていけば良いのですが、複数の観点から見るとそれが結構変わってしまったりするのです。
考えてみれば、手を付ける前の段階でどう処理すればいいか悩む……ということは結構あります。
とはいえ、結局『1時間以内で処理すること』という条件があるので、そこで悩んでいても仕方がないと案件の並び順にやっていくことにしました。
金田さんを信用しきれない
各案件に目を通して、副店長の金田さんに対して『仕事を任せるのが不安』という気持ちになっていました。
一旦金田さんに持ち込まれ、その金田さんが店長のみあに丸投げした案件などもありますし、果たして任せたとしても、まともにやってくれるのか……? と。
また、金田さんが自分にやらせてくれ、と言い出した案件も正直やらせたくないな、不安だな……とか。
結局、各部門の責任者の中でも有能そうな立花さんにお願いしたくなったり、自分で処理したくなったり……ということがちょくちょくありました。
人に仕事を任せるのがうまくないのかなあ、と。
数値の把握に弱い
数値を見て判断する、という案件があったのですが、これに関しては正直もう目が滑って……頭が数字を拒否しているようです……。
総括:自分の傾向を知りたいならおすすめ
インバスケットというのは実際そういう目的で行うものなので、疑似的に案件処理のロールプレイをする、という訓練目的・あるいは自分の傾向を知りたいというならおすすめかと思います。
ただ、最初に案件に目を通したところで、手をつける順番で戸惑ったこともあり、せっかくなら案件の重要度の判別についてもページを割いて欲しかった……というところはちょっと物足りなかったかも。
(筆者の方があえてメールを放置したら、ほんのわずかしか重要なものがなかった、という体験談も書いていますので)
本の中で何度も述べられている通り、『絶対の正解』というのはありませんし、もしかしたら本の中での正解も正解ではないかも知れません。
実際の試験とはかなり違うようなので、これ一冊で試験対策とはならないようですけど、ちょっとしてみたいなら良いかと。
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話の筋にはあまり関係ないですが、最後、主人公が創業者の孫というのにはちょっと力が抜けました。
余談:ビジネス本中毒な時期が私にもありました
昔ビジネス本を熱心に読みふけった時期がありましたが、最近はあまり読んでいませんでした。何だか久しぶりです。
しかし思えば、その熱心に読みふけっていた時期は私は入社したてのプログラマーだった訳で……そんな時期に大真面目に『マネジメント』『断る力』とか読んでいても、ねぇ、という話ではあります。
読むべき時期ではなかったというか……。
思い返せばあの頃は、目の前の仕事より、組織の悪いこととが目についてばかりで、地に足が着いていなかったのです。
マネジメントも組織効率化も何も、まずは自分の職分を果たせるようになってからです。
もちろん個人で効率化できることはすべきですけど、とりあえずでも手を動かすことでしか進まない仕事って、たくさんある訳で。
過去の自分に何か一言言えるとしたら、チーム管理をする立場に行けるように、そんな本を読むより先に、まずは手を動かして最低限の仕事はできるようになりなさい、と言いたいです……。
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今はさよならドラッカー先生。
断ってる場合じゃないよ新人。