【書評】にこたま 1~5巻
今週のお題「最近おもしろかった本」
一巻無料キャンペーンにつられてうかうかと全巻購入しました。簡単にまとめると10年つきあってるカップル周辺の浮気問題とか、恋愛関係のあれやこれを描いた作品で、あまりこういう系統は読まないのですけれど。おもしろいはおもしろいのですが、「わかるなー」という部分と「わからんなー」という部分両方あって興味深いというのが強いかも知れません。
という訳で以下書評です。※ネタバレあり。
彼が浮気、しかも子供ができたら
10年つきあっていて順調な同棲カップル、温子と晃平に沸いた浮気騒動。この辺りから話が動き出します。しかも浮気相手には子供ができたのに対し、温子は子供ができない身体に。
しかも温子と晃平は29歳で、年齢的にも周囲に子供ができたり、結婚だとかそういう話が沸きやすいのです。
浮気相手の女性はシングルマザーとなることを決意したり、しかし母親と折り合いが良くなかったり、感情のふれ幅が大きくなったり。
温子の方も当然浮気にショックを受け、無性に晃平をなじってみたり、距離を置いたり、別の人に目がいったり。
晃平は温子が一番好きだけれど自分の子供ということで浮気相手の女性が何かと気になる。
こう並べてみるとドロドロ愛憎劇、という感じですが、そういうこともなかったです。サラサラ。たまにザラリ。だから最後まで読めたのかも知れないです。
色んな具を加えたり薄めてみたりしつつ煮詰まっていく
作中『煮詰まる』という単語が何度か出てくるのですが、話としてはまさにそんな感じです。
ただ、一定のペースで煮詰まっている訳じゃなくて、色んな具を入れてみたり、強火にしてみたり、弱火でトロトロ煮込んでみたり、水で薄めてみたり。
結末はリアルではないけれど、寂しさはリアル
最終的には温子と晃平は関係を修復して結婚しますし、子供もいます(養子縁組か奇跡的にできた子供かは明示されていないです)。他の登場人物たちも、それぞれの形で進んでいきます。
そういうところに収まっちゃう? という若干非現実的な結末ですが、感情描写の面ではリアルです。登場人物はほとんどみんな、どこかしら寂しさを抱えています。だから誰かと一緒に居たいし、居て欲しい。
そんなリアルな寂しさの描写をしつつ、ちょっと不思議な感じに収めるというのは面白かったです。
余談:自分が温子だったら
彼とは別れちゃうだろうなあと思います。一度でも裏切られた上自分が産めない彼の子供がいるという状況が嫌ですし。一緒にいるとことあるごとにチラつくシコリになるでしょうし。
主人公たちの思考や結末には共感できないながら、さらっと読めてなかなか興味深く面白い本でした。物語のさじ加減がすごく上手です。