デザインとアートの関係は、基礎研究と応用研究の関係に似ている
デザインとアートの違いは、
- デザイン→問題解決(客観的に理解されなくてはならない)
- アート→表現(客観的な理解を必ずしも必要としない)
ということは良く言われています。
下記のブログ記事が非常にわかりやすいので、読みながら非常にうなずきました。
デザインとアートの関係
デザインの職業訓練に通い始めてから、デザインとアートについて考えるようになりました。
デザイナー寄りの先生と、アーティスト寄りの先生両方に講義を受ける機会があるので、思考が刺激されるようです。
デザイナー寄りの先生は「情報をきちんと調べて考えなさい」。
アーティスト寄りの先生は「ぶっとんだことをやってみましょう」。
デザインは、論理と過去例を含めた情報の収集・組み合わせ・整理と配置、応用が主な内容です。
しかし、『ぶっとぶ』ことは、意図的にそうできるものではないように思います。
偉人の伝記などを読むと、天才と呼ばれるような人は本人が意図して『ぶっとんだ』という訳ではなさそうです。
熱意や発想、頭脳、探求心などが、結果的にそうさせている。
また、成功事例の裏では膨大な試行錯誤があり、夢半ばで途絶えてしまった道筋もあり……美大を出ても食べていけるのは一握り、という話も思い出されます。
そこまで考えたところで、これは基礎研究と応用研究の構造と似ているということに気がつきました。
基礎研究と応用研究
基礎研究
学術的な知識や,製品や利益に直接結び付くことのない技術と理論の発見に関する研究活動。一般に時間と費用が掛かる。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より
応用研究
基礎的な技術や理論を現実の製品に結び付けるための研究活動。ここでは特定の開発目的に合致するように研究計画が立てられ,定められた期限と予算の中で一定の成果が上げられることが要求される。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より
最近、研究費用が足りないという話題をちょくちょく見かけるのですが、特にすぐに成果と結びつきづらい、基礎研究と呼ばれる分野で顕著なようです。
デザインが過去の事例や技術などの情報を元にする『応用研究』なら、認められるのはごく一部のアートは『基礎研究』にそのままあたると感じました。
まとめ:基礎研究も応用研究もどちらも大事にしたい
私自身はどちらのタイプかと考えてみると、どちらの要素も持ち合わせている部分があるように思います。
たとえば、デザイン的に問題解決や成果を目指すことは純粋にパズルのようで楽しいし、一方でひたすら興味のある分野(今だと柿渋染めや和紙とか)の技法を突き詰めてみるのも好きです。
たぶん、どちらも一度熱中したら寝食を忘れるタイプだと思います。
だからといってどちらかしかやらない、というのもきっと疲れてしまうので、そのときどきでやりたいことをバランスを取りながらやっていきたい、と思ったのでした。
パソコン上でのデザインの勉強はしているのですが、それと並行して、手を動かして、リアルにある物を作ってもみたり研究したりしたいという衝動にも駆られています。
今までの経験上、どちらもしっかりやり込んでみると、後々意外な組み合わせとか活用方法を思いついたりすることも多いので、そういうのはとてもわくわくします。
追記:将来的にどうなりたいか
トスさんの記事を拝見してなんとなく以前から考えていたことが、最近やっとまとまりました。
私はたぶん、天才型でもアーティスト型でもないので、デザイナー寄りだなと思います。特に自分のデザインしたもので世界的に有名になりたいとか、そういう訳でもないですし。
ただ、どういうデザイナーになりたいかというのは、特にイメージがなかったのです。
実は授業でも「良いデザイナーとは」といったお題が出た訳ですが、クライアントの成果に寄与できること、また誠実であることが良いデザイナーの条件ではないかなと考えています。
デザインを悪用すれば品質の悪いものを実物以上に見せることもできますし、データの表示方法やサービス内容を誤魔化すことも可能です。
誠実というのはクライアントに対してだけでなく、自分がデザインしたものを見たり使ったりする人に対しても誠実でありたいと考えています。
同時に、デザインと並行してたとえば染物の研究など、そのとき興味のある分野の基礎研究的な部分のあることもやっていきたい……というのは上に述べた通りです。
成果を出すためには広範な知識があった方がいいでしょうし、誠実でありたいならそれが通せるだけの技量も身につけなくてはいけない。
基礎研究はすぐに成果が出るとは限らないし、時間もかかる。
そういうことのバランスを取りながら、上手なサイクルを回していければなあと思っています。
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